
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome)は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる病気で、一時的に血液中の酸素レベルが低下し、二酸化炭素濃度が上昇することがあります。患者数の多い疾患で、世界全体で10億人以上と言われています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)の2種類に分けられますが、中枢性は脳に原因となる疾患がある場合を指し、脳神経外科が担う領域になるので今回は取り上げません。OSASは、最もよく見られるタイプで、睡眠中に喉や上気道が塞がってしまうことで発生します。睡眠中に呼吸が止まることがあり、その回数が1時間に5回以上だと疑われます。
肥満の人に多いのが特徴ですが、扁桃腫大などがあって喉が狭い、歯並び・噛み合わせが悪い、首が太い、頭が小さく丸い、加齢なども原因となります。それ以外では、飲酒、睡眠薬の使用、甲状腺機能低下症や逆流性食道炎などの病気が原因となる場合もあります。睡眠中に大きないびきをかき、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こして目が覚めることがあります。睡眠が妨害されてしまうので、日中に眠気が出る、疲労感がある、頭痛、思考力・集中力の低下などの症状が出ます。気を抜くと寝てしまう、誰かと話している途中ですら寝てしまう、朝は頭が痛いことが多い、疲れが取れない、集中しないといけないのに眠気に襲われて集中できない、居眠り運転をしてしまったなどの症状が出ます。
最もよく見られる症状はいびきですが、いびきがあるから睡眠時無呼吸症候群がある訳ではありません。また、睡眠時無呼吸症候群は症状が出て困るという点が問題になるだけでなく、脳卒中、心筋梗塞、心房細動、高血圧などのリスクが上がり、1時間に30回を超える呼吸停止があると死亡リスクが高まると報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の診断と重症度の判定をするには、これまでは病院に入院し、装置を付けて寝ている時の脳波、呼吸低下・停止回数、酸素化状態を測定する睡眠ポリグラフ検査(PSG)が用いられてきました。近年は、簡易検査がまずは行われることが多くなりました。簡易検査では、指や腕に簡易の装置を付けていつも通り就寝します。装置が寝ている間の呼吸停止の回数を装置が測定してくれるので、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかどうかを調べることができます。簡易検査のメリットは自宅で簡単に検査ができることです。デメリットは、脳波や睡眠の深さまでは測定できないため、簡易検査の結果次第では、睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行う必要があることです。しかし、現在は、睡眠ポリグラフ検査(PSG)も自宅でできるようになったため、以前の様に入院する必要はありません。検査では無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI)を測定します。AHIは、睡眠1時間当たりの無呼吸と呼吸数減少の平均回数です。AHIの数値が高いほど重症であり、有害な影響となる可能性が高まります。
睡眠時無呼吸症候群の治療には、持続陽圧呼吸療法(CPAP)によって睡眠中に呼吸が止まることを防ぎつつ、危険因子となる肥満や飲酒、喫煙、嚙み合わせの悪さ、扁桃肥大などを取り除く治療を行っていきます。持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、日中に強い眠気がある患者に対して開始を検討します。持続陽圧呼吸療法は、舌根沈下などによって気道が閉塞しないように、高い圧を鼻から加えるマスクを付けて寝てもらう治療です。高い圧をかけることで強制的に空気の通り道を確保できるので、無呼吸を防ぐことができます。慣れるまでは時間がかかりますので、途中で脱落してしまう人もいますが、慣れてくると付けたままでちゃんと眠れるようになり、日中の眠気の改善が得られやすくなります。咬み合わせが悪い人などで、症状の程度が中程度の人の場合は、寝ている間、マウスピースを付けて気道が広がるようにするという手段があります。マウスピースの作成は歯科医さんで可能ですので、必要な場合はご紹介させていただいております。その他、生まれつき扁桃肥大がある人は扁桃切除するという方法もありますので、その場合は耳鼻咽喉科さんに紹介となります。
危険因子となる肥満や飲酒、喫煙がある場合には、ダイエット、禁酒、禁煙が効果的です。また、鼻閉感があると口呼吸になりやすくなってしまうので、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎がある場合は、それらを治療することも大切です。さらに、一番簡単に始められる方法は、横向きで寝ることです。横向きになることで舌根沈下を防ぐことができ、それだけでいびきや呼吸停止の軽減が得られることがあります。慣れるのに少し時間を要しますが、試してみるのをお勧めします。
参考資料:株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン