
肺結核
肺結核
結核菌と呼ばれる細菌が原因となる感染症です。肺に感染が起こる人が多いですが、腸や腎、リンパ節、頭蓋内などにも病変を生じることがあります。WHOの推計によると、日本での新規結核患者は39,384人で、1年間に2,650人の人が結核で亡くなっています(2000年)。1900年代後半まで減少傾向だったものの、そこから再度、増加傾向に転じ、今現在でも日本は結核の中蔓延国に指定されています。結核の感染経路はほとんど経気道性で、非常に感染力が強いため、空気感染を起こしてしまいます。菌自体の毒性が強いものではなく、感染したことと、発病は同じ意味ではありません。喀痰から結核菌が同定されたり、胸部レントゲンやCTなどで異常所見が認められたりしたら、発病したと判断されます。
逆に結核保菌者になったものの発病していない時は、潜在性結核感染(LTBI)と呼ばれます。通常の免疫力を持っている人の場合は、潜在性結核感染者が発病するのは1割程度であり、9割の人は発病しません。この状態では症状もなく、周りの人への感染力はありません。治療も必ずしないといけない訳ではありませんが、治療をすることで、治療をしない人と比べて発病率を6割程度下げることができるので、私の意見としては治療が望ましいと考えています。肺結核を発症した場合、症状としては、咳・痰(特に血痰)などが最もよく見られる症状で、微熱が続く人も多いです。進行度がかなり進んでいない限りは、咳は断続的に続くものの、そこまでひどくはなくて高熱もあまり出ません。治療は多剤併用の抗生剤治療を行います。4種類の抗生剤を併用した6カ月間の治療、もしくは、3剤を併用した9カ月間の治療を行うことが標準的で、適切に投与を行えば、結核は完治できる病気になりました。ただ、治療薬が多く長期投与することになるので、治療の副作用に注意が必要です。
副作用として肝腎障害や視覚障害、聴覚障害などが有名ですので、治療開始前だけでなく、治療開始後も定期的な採血や耳鼻科・眼科受診をしていく必要があります。何か異変を感じた時には主治医に相談するようにしましょう。結核に対する予防措置として、BCGワクチンの予防接種が行われており、日本では乳幼児期に1回接種が行われています。生後1歳までのBCGワクチン接種により、小児結核の発症を6割前後、重篤な髄膜炎や全身性の結核の発症リスクが6~7割ほど低下し、成人の肺結核に対する発病予防効果が5割ほどと報告されています。義務化されてはいないのですが、接種が望ましいと思われます。