
「息が止まっていると言われませんか?」
家族や友人、パートナーに、「いびきがうるさい」「呼吸が止まっている」「会議中に眠ってたよ」「運転中によくあくびをしているね」と言われたことのある人は多いと思います。
その症状は、睡眠時無呼吸症候群の症状の可能性があります。
4人に1人は睡眠時無呼吸症候群があると言われており、あなたの身近にもいるかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が断続的に止まったり、著しく浅くなったりする状態が繰り返される疾患であり、単なるいびきの問題ではなく、全身の健康に深く関わる重要な病気です。この疾患の本質は「眠っている間に十分な呼吸が維持できないこと」と、それに伴う慢性的な低酸素状態と睡眠の分断にあります。
代表的な症状は、下記のものとなります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の主な症状
・いびきをかく
・睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを感じる
・夜中に目が覚める、寝付きが悪い
・何度もトイレに起きる
・寝汗をかく・寝相が悪い
・熟睡感がない
・倦怠感・頭痛
・日中の強い眠気
・集中力・記憶力の低下
・抑うつ状態(やる気が出ない、イライラなど)
・性的欲求の低下
・ED(勃起機能不全)
本来、睡眠は脳と身体を回復させるための時間ですが、睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まるたびに体が危険を察知して微小な覚醒反応を引き起こします。これにより本人は気づかないまま何度も眠りが中断され、深い睡眠に入ることができなくなります。その結果、たとえ長時間寝ていても熟睡感が得られず、日中に強い眠気や集中力の低下、慢性的な疲労感を感じるようになります。
この疾患の中で最も多いのは閉塞型と呼ばれるタイプで、これは睡眠中に喉の気道が物理的に狭くなったり塞がったりすることで発生します。肥満によって首周りに脂肪がつくと気道が圧迫されやすくなり、さらに舌や扁桃の大きさ、顎の骨格なども影響します。特に日本人の場合、欧米人ほど肥満でなくても顎が小さいなどの骨格的特徴により発症するケースが少なくありません。一方で中枢型と呼ばれるタイプもあり、これは脳から呼吸の指令が適切に出なくなることで起こりますが、頻度としては比較的まれです。
症状は夜間と日中の両方に現れます。夜間には大きないびきや呼吸の停止、息苦しさによる覚醒などが見られますが、これらは本人よりも同居している家族の方が気づきやすい特徴です。一方で日中には、強い眠気や注意力の低下、朝の頭痛などが現れ、仕事や学業、さらには運転などにも影響を及ぼします。特に日中の過度な眠気は交通事故のリスクを高める要因としても知られています。
さらに重要なのは、この疾患を放置した場合の全身への影響です。睡眠中に繰り返される低酸素状態と覚醒反応は交感神経を過剰に刺激し、その結果として高血圧や心疾患、不整脈、脳卒中などのリスクを高めます。また、代謝にも影響を与え、糖尿病の発症や悪化にも関与するとされています。このように、睡眠時無呼吸症候群は単なる睡眠の問題ではなく、生活習慣病や循環器疾患と密接に関係する全身性の疾患といえます。
診断には、睡眠中の呼吸状態を客観的に測定する検査が必要となります。自宅で行える簡易検査もありますが、より正確な評価には医療機関で行う終夜睡眠ポリグラフ検査が用いられます。この検査では無呼吸や低呼吸の回数を数値化し、その重症度に応じて治療方針が決定されます。

治療の中心となるのは、持続陽圧呼吸療法と呼ばれる方法で、専用の装置を用いて鼻から空気を送り込み、睡眠中の気道の閉塞を防ぎます。これにより呼吸が安定し、睡眠の質が大きく改善されます。また、肥満が関係している場合には減量が非常に重要であり、飲酒の制限や睡眠姿勢の工夫などの生活習慣の改善も効果的です。軽症の場合にはマウスピースが用いられることもあり、原因によっては外科的治療が検討されることもあります。
この病気が厄介なのは、自分では気づきにくい点にあります。多くの人が「よく寝ているはずなのに疲れが取れない」と感じながらも、それを単なる疲労やストレスのせいだと考えてしまいがちです。しかし実際には、睡眠中に何十回、場合によっては何百回も呼吸が止まっていることがあります。そのため、いびきが大きい、日中の眠気が強いといった兆候がある場合には、軽視せずに医療機関での評価を受けることが重要です。
睡眠時無呼吸症候群は適切に診断し治療すれば大きく改善できる疾患であり、生活の質だけでなく将来的な健康リスクの低減にもつながります。したがって、単なる睡眠の問題として放置せず、早期に対処することが極めて重要だといえます。
改変して引用:無呼吸ラボ https://mukokyu-lab.jp/




