
症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、夜間に繰り返し起こる無呼吸・低呼吸により、血液中の酸素が低下したり、頻繁に中途覚醒が発生したりすることで、身体にさまざまな悪影響をおよぼす病気です。代表的な症状は、下記のものとなります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の主な症状
・いびきをかく
・睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを感じる
・夜中に目が覚める、寝付きが悪い
・何度もトイレに起きる
・寝汗をかく・寝相が悪い
・熟睡感がない
・倦怠感・頭痛
・日中の強い眠気
・集中力・記憶力の低下
・抑うつ状態(やる気が出ない、イライラなど)
・性的欲求の低下
・ED(勃起機能不全)
いびきや睡眠中の無呼吸は広く知られている代表的な症状ではありますが、本人が気づくことができないため、家族やパートナーからの指摘で気づくことが多いです。
また、全てのいびきが睡眠時無呼吸症候群(SAS)に繋がるとは限りません。お酒を飲んだときや疲れた時などに発生するいびきもあります。
あと、日中の眠気を伴わない場合もあります。眠気を伴わない場合もあります。その他の症状とも照らし合わせてチェックするようにしましょう。
主な症状の中には、更年期障害やうつ病の症状と似ているものもあり、それらの病気と誤って判断された結果、SASが見逃されてしまうこともあります。
日中の眠気が代表的な症状です。それによる最も大きなリスクが、居眠りや集中力の低下によるさまざまな事故です。
睡眠時無呼吸症候群の人が交通事故を起こす頻度は、SASのない人の約2.5倍といわれています。交通事故は、他人を巻き込む大事故に繋がることがあり、本人のみならず社会全体に影響を与えるものとなります。さらに、SASによる日中の眠気や倦怠感などにより、生産性や作業効率の低下・作業ミスなどを引き起こします。例えば、機械に体を挟まれて大ケガをするなどの労働災害を引き起こすリスクが高まります。
労働災害のレベル次第では、個人はもとより企業としてもその責任を問われ、経済や産業的な損失を招く可能性もあります。SASを放置するということは、さまざまな影響を与えるということを心に留めておきましょう。
また、重症のSAS患者の死亡率は、健常者の約2.6倍といわれています。これは、無呼吸によって心血管系の合併症(心不全や急性心筋梗塞、脳梗塞など)を引き起こし、突然死のリスクが高まるためです。さらに、高血圧や糖尿病など、さまざまな病気を合併することがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因のひとつして、肥満が挙げられますが、日本人の場合は、肥満ではない人もSASである可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる人の特徴
・肥満
・小さいあご、小顔
・太い(短い)首
・男性
・閉経後の女性
・加齢
・家族歴(遺伝)
・鼻づまりなどの鼻症状
・アルコール・睡眠薬
・たばこ
・アデノイドや扁桃肥大
・口呼吸
・舌が後方に落ち込む
日本人をはじめとするアジア人はあごが小さいため、無呼吸が発生しやすいといわれています。あごの形など骨格的特徴は遺伝によって受け継がれるため、両親や祖父母にSASやいびき、無呼吸などの症状がある場合、子どもや孫にも同様の症状が多く認められます。
睡眠時無呼吸は、成人男性に発生しやすいですが、女性や子どもでも発生します。女性の場合は閉経後の女性ホルモン分泌低下が原因となることがあり、子どもの場合はアデノイドや扁桃肥大などがSASの原因になることがあります。また、加齢により筋力が低下することで気道が閉塞しやすくなることも、SASの原因のひとつとして挙げられます。
SASを放置すると突然死のリスクも高まる
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や鼻ポリープ、鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎などで鼻づまりがあると、口呼吸になってしまう為、いびきや無呼吸を起こすことでSASの可能性が高くなります。
また、アルコールや睡眠薬による気道の筋肉の緩みや、たばこによる気道粘膜の炎症や腫れ・むくみも、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因となります。
検査

問診・睡眠尺度評価(ESS)
いびきや無呼吸の指摘、自覚症状、既往歴などの問診に加え、病的な眠気かどうかを判断するために睡眠尺度評価(ESS)という質問表が用いられます。
ただ、睡眠時無呼吸症候群であっても眠気を訴えない患者さんが多いため、自覚症状がなくても、循環器疾患を伴っている患者さんなどは睡眠時無呼吸を疑い、検査を実施する場合もあります。睡眠時無呼吸症候群の疑いが考えられる場合、睡眠中の検査が実施されます。
簡易無呼吸検査
睡眠時無呼吸の有無と重症度を判定するために実施される検査です。
簡易無呼吸検査は、指先・呼吸のセンサーをつけ、睡眠中の血液中の酸素、呼吸の状態を測定します。これにより、10秒以上の無呼吸・低呼吸の1時間当たりの回数(AHI)、酸素の低下状態を測定します。
自宅でもできる検査ですので、より普段の睡眠に近い状態で検査をすることが可能です。
ポリソムノグラフィ(PSG)検査
PSG検査は、睡眠時無呼吸症候群の検査では最も精密な検査方法です。脳波・筋電図・心電図・呼吸・血液中の酸素等、さまざまな生体信号を測定します。
これにより、10秒以上の無呼吸・低呼吸の1時間当たりの数(AHI)、SASの種類(閉塞性・中枢性)、酸素の低下状態はもとより、睡眠の質(睡眠の深さ・分断の有無)、不整脈の有無、その他の睡眠障害の有無等について診断されます。
PSG検査では睡眠を判定できるため、総睡眠時間が計測でき、より正確にAHIを算出できます。
これまで、この検査はさまざまなセンサーを装着する必要があるため専門の検査施設等に入院して行う必要がありましたが、装置の小型化や装着の簡略化などにより、自宅でも行えるようになって来ました。近年では、在宅PSG検査を取り扱う病院が増えています。
在宅PSG検査は、装置装着がやや複雑ではあるものの入院が不要のため自己負担額が安くなったり、自宅でリラックスした状態での検査が可能になるというメリットがあります。
ただし、診断できる疾患や状態が限られてしまうため、入院での検査が必要な場合もあります。
診断・治療方針の決定、治療開始
AHI(無呼吸低呼吸指数)が5以上で日中の眠気やいびきなどの症状が見られる場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
重症度は、AHIが5以上15未満で軽症、15以上30未満で中等症、30以上で重症とされています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因などにより治療方針が決められます。
治療にはCPAP(シーパップ)治療、マウスピース(口腔内装置)、また、アデノイドや扁桃腺肥大が原因の場合は外科的手術による治療などがあります。
CPAP(シーパップ)療法
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)は、眠っている間に装置からホース・鼻マスクを介し空気を気道に送り、常に圧力をかけて、つぶれやすい“のどの通り道”を支える治療方法です。
中等度〜重症の睡眠時無呼吸では第一選択になることが多く、最も有効性が高いと言われており、効果に関する研究の蓄積が最も豊富です。
睡眠時無呼吸症候群の症状改善が期待できる
持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)は、現在、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法として最も有効性が高いと言われているものです。
この治療を適切に行うことで、睡眠中の無呼吸やいびきが減少し、熟睡感が得られるようになります。また毎日継続することにより、眠気の改善、夜間のトイレの回数が減るといった、睡眠時無呼吸症候群の症状改善が期待されます。
さらに、高血圧の改善や、心血管疾患のリスクが軽減する可能性も報告されています。
メリットと注意点
装着したその夜から症状が改善しやすい即効性が強みであり、重症度の高い人でも治療効果が高いことが多くの研究で示されています。
使用するマスクの種類や圧力、加温加湿などを細かく調整できるため、症状や生活スタイルに合わせて「続けやすい形」に整えていくことが可能です。
一方で、毎晩の装着が必要で、最初は違和感を覚えることがありますが、マスク選び・加湿・圧の微調整・鼻詰まりの治療などで軽減できることが多いとされます。
消耗品の交換や定期通院など費用面の負担もありますが、定期通院や装置の調整等は他の治療でも発生しうるものです。
CPAP療法の仕組み
CPAP療法は、装置からホース・鼻マスクを介し、気道に常に圧力を掛けて空気を送り、塞がらないようにすることで無呼吸や低呼吸を抑制する仕組みになっています。空気の圧力は、病状・状態に応じ医師が処方します。
CPAPの各部位名称
空気で喉が開かれる様子
健康保険適用となる場合
CPAP療法は、検査を行い一定の基準を満たせば健康保険が適用されます。その際、定期的な外来受診が必須となります。また、CPAP療法を適切に続けるためには、不調や不具合が起きた時に主治医と相談をすることが重要です。
CPAPのレンタルについて
CPAP療法が保険適用となった場合、医療機関よりCPAP装置が貸し出されます。費用は、目安としてそれぞれ以下の通りです。
3割負担の場合 約5,000円、1割負担の場合 約1,500円
この中には、診察、機器の保守管理、マスク消耗品供給等の治療に必要な諸費用が含まれています。ただし、CPAP療法以外の他の治療や検査を行うことにより変動する場合もあります。
また、医療機関より指示を受けた機器取り扱い業者が、設置時の説明や保守管理など、正しく機器をお使いいただくためのサポートを行います。
レンタルの仕組みについて詳しくは、主治医または医療機関へご確認ください。
近年、CPAPを自費購入されるケースもあるようですが、平均して40万円と高額な購入費がかかる上に、機器の正しい設置・設定やメンテナンス・修理などのサポートも無く、すべて自分で行わなければならないため、慎重に検討することが必要です。
CPAP機器やマスクについて
機器本体は15〜20センチ程度の大きさで、ベッドサイドに置いて使用します。マスクは、鼻だけを覆うものや鼻と口両方を覆うものなどいくつかのタイプがあり、口漏れの程度や症状によって選択をします。
鼻だけを覆うネーザルマスク、鼻と口を覆うフルフェイスマスク
CPAP療法は使用することで気道を広げるという対症療法のため、毎日継続的に使用することが必要となります。継続的に正しく使用するには、マスクの装着を快適に保つことも重要です。呼吸をして空気が漏れない程度に、強く締め付けすぎないように軽くフィットさせるようにする等、装着具合や位置を調整しましょう。
また、マスクを清潔にすることも大切です。お手入れは、出来るだけ毎日、中性洗剤を薄めたぬるま湯で洗浄し、よくすすいだのちに、風通しの良い場所で陰干してください。
どうしても上手く装着できなかったり、睡眠中の不快感が続いたりする場合は、必ず主治医に相談をしてください。
空気の圧力について
CPAPの空気圧力は、患者さんの症状や状態に合わせて医師が処方し設定を行います。人によっては高い圧力が必要になる場合もあるので、徐々に慣れていただくことも必要となります。
しかし、継続して使用していく中で、その症状や状態が変化することで、CPAPの圧力を変更することもあります。最初に設定された圧力に不快感を感じたり、使用そのものがつらくなったりする時には、必ず主治医に早めに相談するようにしましょう。
生活習慣の改善
CPAP治療やマウスピースなどの治療と合わせて、睡眠時無呼吸症候群の要因や合併症のリスクを軽減するために、生活習慣の改善も重要です。
減量、禁酒、禁煙で無呼吸を完全になくすことは難しいですが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の改善に寄与する可能性があります。また、入眠しやすくなる寝る前の過ごし方、寝室環境の整備、適切な睡眠時間の確保などは、すべての人にとって大変有効です。
特に肥満の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者さんは、減量による軽症化が期待でき、10%の体重の減少でAHIが26%減少したという報告もあります。
マウスピース(口腔内装置)療法
“オーダーメイドのマウスピース”で下あごを数ミリ前へ突き出し、舌のつけ根まわりのスペースを広げる治療法です。
軽〜中等度の方やCPAPがどうしても合わない方の選択肢になります。
マウスピースの作成は健康保険の適用となりますが、医科の診断・紹介状が必要で歯科で作成されます。
手術・植込み型装置による治療
外科的なアプローチで“空気の通り道を広げる”治療方法で、大きく分けて、「顎顔面・咽頭の手術」と「体内に装置を植込む手術」の2種類があります。
CPAP治療がどうしても続けられない、あるいは解剖学的な狭さがはっきりしている場合に検討します。
顎顔面・咽頭の手術は「狭くなる場所」を直接広げる治療法で、植込み型装置(舌下神経電気刺激療法:HNS)は舌下神経を刺激することで、舌を収縮させて前方にだすことで咽頭が広がり、通りがよくなる治療法です。
睡眠時無呼吸症候群は4人に1人はいると言われています。
生活の変化(成長、妊娠、加齢、体重増減)に合わせて定期的に治療を見直すことで、必要十分なケアを保てます。
困ったら一人で抱え込まず、専門外来や主治医に早めに相談してください。
引用:無呼吸ラボ https://mukokyu-lab.jp/




